ジャパンバリスタチャンピオンシップ2012ファイナル・セミファイナル雑感その3

投稿者: | 2012/10/08
LINEで送る
Pocket

長くなりましたが今回で最終回、丸山珈琲さんのバリスタたちのパフォーマンスを紹介します。

丸山珈琲へ

丸山珈琲

今年も三名のバリスタを準決勝に進めた丸山珈琲、すでに国内のバリスタの憧れを一身に背負っているような感のあるコーヒーロースターです。そのプレゼンテーションはやはり今年も要注目といえるものでした!

◆松本祐樹バリスタ(リゾナーレ店)
私が彼のプレゼンテーションを観戦したのは今年で2回目、実は密かにファンです、私(笑)。
今年はボリビア/マルセリーノ・カタリを使用してのパフォーマンス。「最初はこのコーヒーのよさに気づくことができなかった」と切り出し、「自分がこのコーヒーのよさを発見した体験を感じていただきたい」という主旨でのプレゼンテーションでした。

チェリーやプルーン、黒蜜のような風味のあるマルセリーノ・カタリにあわせて、それらのフルーツをお湯に浸したフルーツウォーター「フルーツプレス」とフルーツ果汁を絞った「フルーツ・エスプレッソ」を使ったシグネチャービバレッジは興味深かったです。
昨年はどこか借りてきたような言葉が少々残念に感じていたところがあったのですが、今年は前述のように自分の中からの言葉だけあって、全体的にアツいプレゼンテーションだったように思います。

今年は残念ながら決勝進出はなりませんでしたが、昨年より本当に大きく成長されたバリスタだと思います。
次はぜひ、決勝のステージであの笑顔を見たいなぁ、と、また密かに応援しています!

 

◆斎藤久美子バリスタ(ハルニレテラス店)
もうこの名前をジャパンバリスタチャンピオンシップで聞かない時はないんじゃないか…と思うことがあります。
いつまでもチャレンジし続ける姿はバリスタの鑑といっても過言ではないかもしれません。

斎藤バリスタが今年使用したコーヒーは、ブラジル/レイトハーベストカップオブエクセレンス2位、シティオ・ビスタ・アレグレ。カルモ・デ・ミナスの農園のコーヒーで、今年から開催されたナチュラル部門のカップオブエクセレンス入賞のコーヒーです。
斎藤バリスタはこのコーヒーのバランスの良さに注目したシグネチャービバレッジの提供からスタートしました。まずはカルモ・デ・ミナスの酸のボリューム、次にナチュラルのマウスフィール、甘さ、バランスのよさ、最後にブラジルらしいナッツのフレーバーを順に感じてもらう仕立てで、そこで感じた要素をカプチーノ、エスプレッソでも感じてもらう、というプレゼンテーションでした。

後半では斎藤バリスタとカルモ・デ・ミナスのコーヒーとのかかわりにも触れられ、ここまでの斎藤バリスタの集大成といえる様なパフォーマンスでした。
しかしきっとここで終わり、というわけでもないと思います(ですよね?)ので、今後の展開が非常に楽しみです。
斎藤バリスタは決勝まで進出、6位に入賞されました。おめでとうございます!

 

◆井崎英典バリスタ(尾山台店)
2008年にハニーコーヒーから出場され決勝まで進出してから4年、
今回は丸山珈琲から出場し、そして見事今年のチャンピオンに輝きました!

今回使用したコーヒーはコスタリカ、ウェストバリーのエルバス、ゲイシャ種。私も飲んだことがあるのですが、ウェストバリーのコスタリカらしさとゲイシャのユニークなフレーバーがいい感じに共存している、とても素晴らしいコーヒーでした。

井崎バリスタのシグネチャービバレッジは、このエルバス・ゲイシャにあるゲイシャらしさ、そしてコスタリカらしさを段階を追って感じてもらえるようなものでした。まず用意されたのはエルバス・ゲイシャの水だしコーヒー、そしてカスカラとレッドハニーのペルガミーノ(パーチメント) のお茶。そして抽出したエスプレッソにアカシアハニーシロップを加えてペルガミーノ・カスカラティーと混ぜ、豊かな甘味を感じられるドリンクに仕上げます。そののち水だしコーヒーを加え、ゲイシャらしいキャラクターをより引き出した、少し温度を下げたドリンクへ変化させます。

エルバス・ゲイシャの素晴らしさは、フレーバーはもとよりその甘味とマウスフィール。今年はウェストバリーの降水量が少なく、より熟度が増したことにより、かなり品質が高くなった、というお話で、カプチーノではミルクと合わせた時のその甘味にフォーカスし、エスプレッソではヌガーや黒蜜のような甘さ、ボディ、花から抜けるフローラルなジャスミンのフレーバー、後味にラズベリーのような酸味、という説明。私は自分で体験していたこともあって記憶が蘇り、この日いちばんコーヒーが飲みたくなった瞬間でした(笑)。

彼のシグネチャービバレッジに登場したカスカラティーは実はワールドバリスタチャンピオンシップではここ数年でとてもポピュラーな素材で、ここ数年の出場者の中にはコーヒーノキの葉をお茶にしたバリスタや、コーヒーチェリーをそのまま煮出したバリスタもいました。コーヒーに由来するものを素材にすることで、よりストーリーのあるプレゼンテーションになるのがメリットといえます。

いい意味で若さを感じさせない落ち着いたパフォーマンスと時折見せる笑顔、ホスピタリティを感じるプレゼンテーションでした。若きチャンピオン、本当におめでとうございます!!!WBC、楽しんできてくださいね!

 

◆今年のJBC、大きな変更点
今年のJBCのルールで大きく変わったのはエスプレッソマシンの配置です。
これまではセンサリージャッジ(お客様想定、主にビバレッジの味の審査員)からエスプレッソマシンの操作部が見える配置で、ともするとエスプレッソの抽出状態からドリンクのクオリティを推測できてしまう状態だったのですが、今回からエスプレッソマシンの背部がセンサリージャッジ側に向かった配置に変更され、エスプレッソの抽出をセンサリージャッジからは目視できなくなりました。

 

(左:旧配置、右:新配置)

付随的にバリスタの動線やプレゼンテーション時の目線の運び方が無理のないものになり、今回よく見られたのはカプチーノのミルクスチーム時にお客様のほうに目線をやり、目線があうとにっこりスマイル、というもの。これ、ふだんのお店でもよく見られるコミュニケーションの一環ですよね。

より日常の業務に近い自然な姿を多く見ることができ、個人的には好感のもてる新レイアウトです。

 

◆まとめ
予選含めて、すべてのバリスタの競技を見たわけではないのでまとめというには大げさですが、自分の追いかけているバリスタたちの成長ぶり(というか進化ぶり)に胸が熱くなる、そんなバリスタチャンピオンシップでした。

日本のスペシャルティコーヒーを盛り上げているもののひとつは、間違いなくこのバリスタチャンピオンシップだと思っています。毎年毎年新たなバリスタの姿もあり、ユニークなパフォーマンスがあり、チャンピオンを目指して日々技術を磨くその姿は、これからバリスタを志す人たちの目標となることでしょう。

スペシャルティコーヒーの新たな可能性をひらいていく、そんなバリスタに私もあこがれている一人です。
バリスタチャンピオンシップに関わった人たちに最大限の賛辞をおくりたいと思います!

来年のJBCも、今からほんとうに楽しみです。