パブリックカッピングのすゝめ

投稿者: | 2011/02/03
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カッピングについては散々ブログで触れてきたので以下のリンクを参考にしていただければ、と思います。
カッピングとは、要するにコーヒーのテイスティングのことを指します。

Cup of Excellence のカッピングフォームと品質基準
カッピング四方山話

■海外ではわりと一般的
欧米では“パブリックカッピング”といって、
決められた日時にお店に行くと、顧客がカッピング出来る日があります。
セミナーのようにスコアやプロファイルを厳密にすり合わせるものではないようなのですが、いってみれば、たくさんのコーヒーの味見が出来る、ということになるかと思います。

スペシャルティコーヒーロースターのうちではこのパブリックカッピングはポピュラーな取り組みで、欧米のスペシャルティコーヒーロースターを中心に広く行なわれています。
Nossa_Familia_Gabriel_Carvalho_Dias2
(via from Nossa Familia Coffee Cupping with Gabriel Carvalho Dias)
パブリックカッピングによって得られるメリットにはどういったものがあるでしょうか?
ちょっと考えてみました。

1.顧客との上質なコミュニケーション
パブリックカッピングの際、その場にいるスタッフは、
おそらくある程度カッピングのスキルがあるスタッフです。
コーヒーについての質問をした際に、フレーバープロファイル(コーヒーに受ける印象)についての説明、またそのコーヒーがどういった地域で、どういった生産処理方法で作られたか、といったことを詳細に答えてくれるスタッフは、漠然とした顧客の好みから、特定のコーヒーを勧めることだって出来るでしょう。
コーヒーを選びに来た顧客にとってはこの上ない機会です。
お店としても、コーヒー・コンシェルジュともいえる優秀なスタッフを育成するのに絶好の機会です。

2.顧客満足度調査
ちょっと大げさかもしれませんが、
パブリックカッピングの場に足を運んでくれる顧客が存在すること自体、
そのお店のコーヒーがどれくらい顧客に受け入れられているか、
という指標になりえるでしょう。
またその場で聞かれる顧客のコーヒーに抱く印象や率直な感想は、
お店にとって貴重な意見になるはずです。
顧客に受け入れられやすいロースティングの方向性を見つけられるだけでなく、買い付けの段階から、顧客の存在を意識した買い付けを行なうことが出来るようになります。

スペシャルティコーヒーの味をフィルターなどで損なうことなく、ただお湯に浸した状態で味をみるカッピングは、スペシャルティコーヒーにとって非常に重要な意味を持っています。

適切にコーヒーを評価することを前提にしているものの、そこから得られるコーヒーの情報は生産者とのコミュニケーションに大きな意味をもつ、ということは以前このブログでも触れましたが、同時に顧客とのコミュニケーションにおいても、スペシャルティコーヒーだからこそ感じられる風味特性を感じてもらえること-仮に最初はわからなかったとしてもスタッフとのコミュニケーションを介して感じられるようになってくること-は、店側にとってもメリットといえるのではないでしょうか。

■日本で普及するの?
しかしこれは、100年以上続く濃厚なコーヒーの歴史を持つ国だからこそ、可能なことかもしれません。
ある意味で、コーヒーの味について、(日本人に比べれば)DNAレベルでわかっている人が多い、そんな文化を持つ国だからこそ、一般的になっているのかもしれないですね。

日本において、パブリックカッピングは一般的になっているか、というと、これは残念なことにまだである、と答えざるを得ません。
しかしスペシャルティコーヒーを扱うお店によっては、カッピングという形でなくともイベントのような形で試飲会を開いたり、コーヒーセミナーを開催したり、また来店時の試飲などを行なっていたり、顧客の味の好みを探る試みや、スペシャルティコーヒーの味覚体験の機会を増やす取り組みが徐々に増えていると感じています。

■飲まれないことには始まらない
スペシャルティコーヒーは、飲んでもらうことから全てが始まります。
ブログでも同じことなんですが、いくら私がこのコーヒーはこういうところが素晴らしい!といっても、体験したことがなければその味を想像することすら不可能です。

ですから私がブログで紹介するコーヒーは比較的知れ渡っているロースターのコーヒーがほとんどですし、基本的に日本の何処からでもおとりよせ可能なものです。
というか、もともとポピュラーなロースターさんが、たまたま私が美味しいと感じるコーヒーを提供されていらっしゃった、というのが本当のところかもしれません。

私が紹介したコーヒーを同じように楽しんでくださっている人たちをTwitter等で見かけると、大変嬉しい気持ちになります。
ぜひぜひ、感動的な味覚体験を、一緒に楽しみましょう!