興味深い記事をTim Wendelboeで発見したのでダシにしつつ、
“ナチュラル”のコーヒーについて、思うところを書いてみたいと思います。
■琥珀色のウタカタ| コーヒーの生産処理 ~ナチュラル~
上記の記事で説明しているように、ナチュラルとはコーヒーチェリーから果肉を剥がさず、チェリーのまま乾燥させる生産処理です。
■The Naturals Debate Revisited Interview with Felipe Croce
Interview with Felipe Croce from Tim Wendelboe on Vimeo.
ナチュラルコーヒーと品質
Tim Wendrlboeの記事で触れられているのは、ブラジルのナチュラル。
ナチュラルで処理しようと思うと気にしなければならないのは気候です。
チェリーを乾燥させる時に雨が降ったりすると、乾燥に時間がかかり、適切な乾燥状態に持っていけないことがあります。そうなってしまったコーヒーからは、腐ったような、すえたような、不快な発酵臭が出てしまいます。もちろん欠点です。
そして、乾燥場(パティオ)が清潔でない場合も、同様の理由で好ましくないフレーバーが出てしまいます。
またブラジルでは、往々にしてナチュラルのコーヒーはコモディティコーヒーの生産処理として伝統的に用いられてきた、という経緯もあります。
なぜならブラジルではコーヒーを乾燥させる時期は基本的に乾燥した気候なので、ナチュラルという生産処理にもともと向いていたからです。
90年代後半から、高品質なコーヒーを求める過程で取り入れられたのが、「パルプトナチュラル」という生産処理です。
コーヒーから果肉を剥がすことで、乾燥に要する時間が短縮され、風味の綺麗なコーヒーが生産されるようになり、今まで品質の高くないナチュラルしか作れなかったエリアから、カップオブエクセレンスに入賞するようなコーヒーが生まれてきました。私が大好きなカルモ・デ・ミナスはそうした流れの中で発見された地域で、パルプトナチュラルによって高品質なコーヒーを作っている農園がたくさんあります。
では、ブラジルではパルプトナチュラルでしか高品質なコーヒーは作れないのでしょうか?
ナチュラルでは、コモディティレベルのコーヒーしか作れないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
ブラジルの乾燥した時期の気候は、コーヒーを乾燥させるのにとても適しています。
そしてすぐれたピッカーや収穫機は、完熟したチェリーだけを選んで収穫することが出来ます。
じつはそれまでのナチュラルがコモディティコーヒーになってしまっていた遠因は、
熟度にばらつきのあるコーヒーでまとめて作ってしまっていたことなのです。
高品質なコーヒーのためには、完熟したチェリーでコーヒーを作ることが必須条件です。
そしてプラスアルファ、適切な乾燥状態を作ること。それに大きく貢献したのが、アフリカンベッドです。
アフリカンベッドはサスペンデッドパティオとも呼ばれ、高床のネットで乾かすパティオ。
通気性抜群で、均一に乾かすことができるすぐれものです。もともとはアフリカの丘陵地帯で、伝統的なレンガやコンクリートのパティオが作れないような地域でコーヒーを乾燥させるために考えられたもので、世界中で一般的になりつつあります。
クオリティの高いナチュラルのために
1.完熟したチェリーだけ収穫
2.乾燥した気候
3.清潔な乾燥場、またはアフリカンベッド
ここまで条件を揃えることが出来れば、高品質なナチュラルコーヒーが作れることが想像できます。
ナチュラルのコーヒーにしかないのは、クリーンで完熟したフルーツのフレーバーと、控えめの甘いアシディティ、そして厚みのあるマウスフィール、それらが同居しているコーヒーです。決して派手ではないですが、とても心地の良いコーヒーが、素晴らしいナチュラルコーヒーにはあります。
欧米でナチュラルが必要とされるのは、やはりエスプレッソのため。
甘さと質感があるコーヒーとエスプレッソの相性はとても良いので、いままであまり高い値がついていなかったナチュラルコーヒーですが、ここ何年かでいいナチュラルには高い値段がつくようになっているようです。
ナチュラルコーヒーのための品評会、「テイストオブハーベスト」も、ブラジルでは開催されています。そうして毎年、高品質なナチュラルコーヒーが生産されるようになり、ブラジル以外の生産国でもナチュラルのコーヒーを作り始める所がちらほらと現れてきました。ただ中米はウォッシュトでコーヒーを作ったほうが、個人的には美味しいんじゃないかな…と思わないではないです。
地域によって最適な品種、最適な生産処理が少しずつ確立されて、より個性豊かなコーヒーが楽しめるようになる、私はそれが嬉しくてたまりません。これからもいろんな発見がなされることでしょう。