■スペシャルティコーヒーとワインの世界
テロワールとはもともとワイン用語。
生育地の地理、地勢、気候による特徴をさすフランス語です。
■テロワール – Wikipedia
近年はワインだけではなく茶やコーヒーについても、
この用語が使われるケースが増えてきました。
それは三者がともに農産物から得られる嗜好品で、
液体であることと無関係ではないと思います。
栽培から収穫、生産処理、この三者には共通点がたくさんあるのです。
■そんなに多用できる言葉か?
しかし、一度立ち止まって考えることも必要ではないか、と思う瞬間があります。
なぜならこの「テロワール」、
現れるのは一部のトップロットの希少なコーヒーだけ、だからです。
ざっくりした生産国ごとの全体的な傾向は存在するように思いますが、
テロワールはそれより限定的です。
高品質コーヒーの要件を満たし、かつその農園でしか出現し得ない風味特性がある、
そんな奇跡みたいなこと、そうそうあるはずがないのです。
■コーヒーのテロワール
個人的にこの地域のコーヒーは好きだ、と思えるエリアや農園が幾つかあります。
◆中米
・パナマ、ボケーテ
エスメラルダのコーヒーはほんとうに素晴らしい。
エスメラルダのみならず、この地域のゲイシャ種には独特の風味特性が見られます。
・ニカラグア、ヌエバセゴビア
昨年のCOEで上位ロットを生んだ地域。
明るい柑橘系の酸味、チョコレートのような甘さ。
・コスタリカ、タラス
アップルのような甘くジューシーな酸味、また赤ワインのようなフレーバー。
・グアテマラ、ウェウェテナンゴ
ピーチやアプリコットのような酸味、フローラル。
・ホンジュラス、カングワル
滑らかなマウスフィール、複雑なフルーツの印象。
◆南米
・ブラジル、カルモデミナス
標高が1,300m近辺のパルプトナチュラルのロットには、
オレンジ、チョコレート、フローラル、アプリコット、華やかで複雑な印象が現れます。
・コロンビア、ウィラ
ワイニーなフレーバー、明るいチェリーやベリー。
◆東南アジア
・インドネシア、スマトラ島、アチェ、レイクタワール周辺
ただアーシーなだけではなくベリーやチェリー、フルーツ感のある酸味。
◆アフリカ
・エチオピア、イルガチェフ
コーヒーとは思えないほどのジャスミンやバラのような、華やかな芳香、
ジンジャーのようなスパイス感、柑橘類を思わせる酸味の質、蜂蜜のような甘さ。
・ケニア、ニエリ、ケニア山周辺地域
赤ワインのようなフレーバー、
ブルーベリー、ブラックベリー、グレープフルーツ、トロピカルフルーツ、
多種多様な鮮やかなフルーツ感のある酸味、粘性のある質感。
ざっと思いつくだけでこんな感じですが、
問題はこれが全てのロットにあらわれるわけではない、ということ。
選別に選別を重ねて選びぬかれたロットにだけ、
こういったハッキリした特徴が現れる可能性があります。
そしてそのコーヒーを適切に焙煎し、かつ抽出した時だけ、
私たちはこれらの風味特性を感じることができます。
■テロワールに出会える至福の時
「from Seed to Cup」という言葉があります。
コーヒーの栽培から生産処理、運搬・保管、焙煎、抽出、
全てにおいて神経を張り巡らせた過程がないと、テロワールは表現されません。
そのコーヒーが特別な一杯であったとき、それは全てにおいて妥協のない、
素晴らしい巡りあわせのバトンで繋がれてきた、情熱を秘めたカップなのです。
そんな素晴らしいコーヒーに出会えることに、感謝したいと思います。