果肉のついたまま乾燥させるものを「ナチュラル」、果肉を剥がして粘液質を除去するものを「フリィウォッシュト」と呼びますが、その両者の中間の生産処理が、「パルプトナチュラル」です。
主として南米ブラジル、中米コスタリカ、パナマ等の国で、多く行われています。
特にブラジルはこの生産処理方法によって、クオリティの高いコーヒー生産地が多く発見されました。
この生産処理方法はフリィウォッシュトより水を使う量が少ないため、生産処理による廃液が環境問題化したコスタリカでも多く取られるようになりました。
コスタリカではこの生産処理方法を「ハニー(プロセス)」と呼んでいます。
パルプトナチュラル(パルプトデスムシラージド、ハニープロセス)
1.果肉を剥がす
フリィウォッシュトと同様、機械を用いて果肉を除去します。
2.粘液質の除去
ブラジルではこの工程をおこなわず、そのまま乾燥させます。
コスタリカでは機械を用いて粘液質を一定割合で除去することがあります。
3.乾燥
パーチメントに粘液質がついたままなのでパーチメントがべたついており、色も茶色がかっていることが多いです。その状態のまま乾燥させます。
(via from saec_products.gif)
この生産処理によってもたらされるコーヒーの特徴は、その甘さです。
焙煎度合いにもよりますが、パルプトナチュラルのコーヒーには総じて甘さに特徴のあるコーヒー、またマウスフィールに厚みのあるコーヒーが多いように感じています。
個人的にはコスタリカのハニーコーヒーをエスプレッソで使う、というアプローチはもっともっと一般的になってほしい、色々な可能性があるコーヒーだと思っています。
2010年JBCで優勝した丸山珈琲:鈴木樹バリスタは、このハニープロセスで処理されたコスタリカ・シンリミテスのコーヒーを使用され、みごと優勝を勝ち取りました。昨年のシンリミテスのコーヒーは質のよい青りんごのような酸味、キャラメルのような甘さ、滑らかな糖蜜のようなマウスフィールで、とても素晴らしいコーヒーでした。
(via from 本日より新豆発売、それは・・・|丸山珈琲のコーヒー&セミナー情報 Blog)
ブラジルの農園では、ナチュラルとパルプトナチュラル、両方の処理方法で生産している所もあり、飲み比べなども楽しいですね。カルモデミナスの標高が高いエリアは、パルプトナチュラルの生産処理によって見直されたエリアで、確かにオレンジやアプリコットといった酸の質は、パルプトナチュラルのほうが魅力的に感じられます。
コーヒーに合わせた生産処理で、より魅力的なコーヒーが発見されてきた、というのはとても素晴らしいことだと思っています。
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なんの文献か忘れてしまったのですが、パルプドナチュラルは加工法の中で一番コスト(設備投資)がかかるため、ブラジルでも大農園でしか採用されていない、みたいな記述を見たことがあります。フリィウォッシュドの方がいろんな施設がいるんじゃないかと思うのですが、ご存知ですか?
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御返事遅くなりました。
仰るとおり、ブラジルのパルプトナチュラルには、熟したチェリーを水流を用いて比重で仕分ける「グリーンセパレーター」と、仕分けられたチェリーに混じっている未熟なものを除いて熟したものだけ果肉を除去する「パルパー」という設備が必要で、その購入・設置には多大なコストがかかります。
フリィウォッシュドはさらに醗酵させるタンク、水路、パーチメントの比重選別機といった設備も必要です。機械乾燥の設備も必要かもしれません。どちらにしても新たに導入するにはかなりのコストがかかります。
小規模生産者の場合は幾つかの農家が集まって出資して設置し、共同で使うなどするケースもあるようです。ロースターが出資したり、そういった援助も実際にあるようですが、全ての生産者がその恩恵を受けられるわけではなく、難しい問題もあるようです。
しかし素晴らしい(消費者に求められる)コーヒーを生産する可能性のある場所はまだまだ各地に隠れているでしょうし、細々とコーヒーを生産しているごく小規模な農園もたくさんあることでしょう。そういった生産者たちが少しでも報われるような仕組みというのが、今一番必要とされていることではなかろうか、と考えています。