丸山珈琲さんのカッピングセミナーに参加してきました。

投稿者: | 2010/10/24
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2010年10月19日、元住吉のCoffee& babyさんで行われた、丸山珈琲さんのカッピングセミナー中級編、コスタリカのテロワール編へ参加してきました。会場のCoffee& babyさんはバリアフリーを徹底されており、細かいところまで気配りの行き届いたすてきなお店でした。

Coffee and Baby

10月セミナー決定しました。(って遅くなってすみません!)
-丸山珈琲のコーヒー&セミナー情報 Blog

カッピングセミナー終わりました
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まず最初に丸山健太郎さんから簡単にコスタリカコーヒーのお話。
コスタリカは以前、いくつかの大きなコーヒー処理場をもつ会社が各生産者のコーヒーを取りまとめて一斉に処理し、自分たちのブランドとして売っていたそうです。そして国内の品評会が開催されるようになると、優勝するコーヒーはそういった大規模な処理場からのコーヒーではなく、自分たちの処理場を持っている単一農園のもの。折しも世界各国でスペシャルティコーヒーという言葉と共に生産者が自分たちの名前でコーヒーを売っていることを知ったコーヒーに対して情熱を持って向かい合っている生産者たちは一族や地域で投資し、自分たちのコーヒーを自分たちで処理し、自分たちの名前で売るようになりました。それを「マイクロミル」といいます。大規模な処理場を「メガミル」と呼んでいたことに対応しての呼び名だそうです。グアテマラやその他生産国ではそれが当たり前になりつつあったので、そういう呼び方をするのはコスタリカくらいのものだそうです。

<参考>
マルケンの日々是考えすぎ
(コスタリカのマイクロミルのお話です)

■1st Session
201010191st

コスタリカのコーヒーに入る前に、コスタリカ以外の国のコーヒーで、様々な地域のコーヒーをカッピング。
4種類は中米のコーヒーでブラインド、4種類は南米、東南アジア、アフリカのコーヒーでオープン、というカッピングでした。
グアテマラCOEモンテクリスト、ニカラグアCOE、ケニア・ティムの人気が高かったです。

A.エルサルバドル・モンテシオン
B.グアテマラCOE#2モンテクリスト
C.グアテマラ・アディーリアマルチネス
D.ブラジル・サマンバイア
E.ニカラグアCOE#15
F.ボリビア
G.スマトラマンデリン
H.ケニア・ティム

コーヒーの酸味は主に、柑橘系の酸であるクエン酸、リンゴのような酸のリンゴ酸、ブドウのような酸の酒石酸、この3つのうちいずれか、または何種類かが混ざって構成されていることがほとんどだそうです。しかしケニアのコーヒーにはどうもリン酸も含まれており、これがケニアなどのアフリカのコーヒーにみられる華やかな印象の一因ではないか、と言われているそうです。コーヒーの味の基本的な要素をなしている酸味ですが、その良さは甘さと一緒になったときに真価を発揮します。前のエントリでも少し触れましたが、酸単体ではただ酸っぱいだけなのに、そこに甘味が加わることで良い意味でのフルーツ感が生まれます。コーヒーに含まれる糖分が、コーヒーの酸味や味そのものをいい意味でごまかし、包みこむことにより、クリーンカップやマウスフィールに影響する、というのが最近のCOEなどの機会で検証してきた結果だそうです。実際私もコーヒーを評価するのに迷ったときは後味に残る甘さの印象で決めているところが多々あり、この話にはとても合点がいきました。

■2ndセッション
201010192nd

このセッションはコスタリカのコーヒーのみでのカッピングでした。個人的な収穫としては、前回東京のカッピングセミナーででてきたコーヒーと同じコーヒーに同じ点数がついたことや、前日飲んでいて点数をつけていたエルサル・デ・サルセロにも同じ点数がついた、ということでした。もちろん答え合わせ、つまりカリブレーションまでサンプルは何かわからないブラインドカッピングでしたので、これは少し自信になりました。このセッションで話題になったのはコスタリカコーヒーの酸の質の良さや、タラスのコーヒーのユニークさでした。

ワイニーなフレーバーを醗酵に近く感じてしまうことでネガティブに取るケースもありますが、熟度の高さからくるワイニーは酸の質やクリーンカップ、アフターテイストにおいて非常にきれいなままです。これを捉えてから判断するのが肝要だと、私自身は思います。

201010192ndResult

A.ウェストバリー シンリミテス
B.セントラルバリー ブルマス
C.タラス ラ・リア
D.ウェストバリー エルバス
E.タラス サンマルコス
F.ウェストバリー エルサル・デ・サルセロ
G.タラス ドン・マヨ

このあとスライド解説に入りました。コスタリカの主な産地、ウェストバリー、セントラルバリー、タラスの3つの地域について、地形的な面の特徴を解説していただきました。またマイクロミルというだけにかなり小規模な生産処理場や、ひとつ尾根が違うだけで変わるコーヒーの印象に驚きました。今丸山珈琲さんでも販売中のエルサル・デ・サルセロは今年の出来がかなりいいのですが、これは実は農園の位置関係から大西洋からの季節風の影響からチェリーの熟す期間に雨が降りやすいことと関係していて、通常雨が降りやすい時期なのに今年は干ばつにより雨が降らなかったためにチェリーが完璧に熟し、もともとポテンシャルの高かった(COEでも入賞するほど)ものがすべて発揮される形になったためだそうです。チェリーの熟す期間に雨が降るとどうしても味がぼやけてしまう傾向にあるそうです。農作物には大きな影響を与える降水ですが、こんな形で功を奏することもあるのですね…

■3rdセッション
201010193rd

前回のセッションにおいて個性的で評価が高く、コスタリカで高品質なコーヒーの宝庫になっているタラスのコーヒーが中心になったカッピングでした。一日同じ産地のコーヒーをすすり続けて疲れている参加者たちを見た丸山さんから、カッピングの時のアドバイスが。
コーヒーをすする時、おなじようなフレーバーのコーヒーが多いとどうしてもわからなくなってくるので、取る項目をひとつに絞り、マウスフィールだけに注目してとって見ましょう、というレッスンを行いました。これはわたしも普段から気をつけていることで、疲れた時には特によくやることです。他の概念を頭から除いて、ひとつの項目に注意する、特にカッピングを覚え始めた頃には、とても勉強になる取り方だと思います。
そしてカリブレーション。

テロワールまで考えてコーヒーを評価する時には、その国のトップオブトップのコーヒーで行うことに意味がある、ということでした。最高品質のコーヒーで見るからこそ、個性豊かな産地の発見に繋がると。本当にそのとおりで、スペシャルティコーヒーのテロワールは、イコールその農園のポテンシャルなので、丁寧に処理され品質管理されたコーヒーでこそ語り得るものだと思います。

このカリブレーションででてきたのは、アップル、リンゴのような酸味、という言葉でした。私も今回驚いたのですが、フレーバープロファイルに、アップルという言葉をかなり書いていました。熟した赤い、甘いジューシーなリンゴの印象や、綺麗な青りんごのような印象のコーヒーもありました。どうやらコスタリカのタラスのテロワールとしては、日本人にとってリンゴの印象を受けやすい特徴があるようです。

201010193rdResult

A.ラ・ピラ
B.ラ・カバーニャ
C.エル・プエンテ
D.アギレーラ
E.ラ・リア Dragon

■総括
テーマであるコスタリカのテロワールを実感できる構成になっていたと思います。カッピングで登場したサンプルも申し分のないトップオブトップといえるもので、素晴らしいコーヒーばかりでした。マイクロミルとして自分の名前でコーヒーを売るようになったとしてもすぐに買い手がつくわけではなく、中には順風満帆とはいかない生産者もいらっしゃるようですが、結果としてコスタリカのこの試みは成功したといえます。ご紹介したように、コスタリカのマイクロミルのコーヒーはとても多様性に富んでいるのですから。今後も素晴らしいコーヒーがコスタリカから発見されることを期待しています。このような貴重な機会を提供してくださった丸山珈琲さんにこの場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました!

コスタリカ以外でも産地のテロワールに関わるセミナーを考えられているとのこと!
そちらも楽しみにお待ちしています。