ちょっとここ最近焙煎について考えることが増えたので、
コーヒーの焙煎について現状の自分自身の考えをまとめておこうかと思います。
「焙煎」というとやっぱりすごく難しいこと、よくわからないことのように
思えてきますが、最近はコーヒーの焙煎のことをブログに書いている方も
多いですし、プロの世界でも昔に比べればずっとオープンに焙煎のことを
話し合えるような雰囲気ができているので、乗っかっておこうと思っている
フシもあります(笑)。
やっているうちにこの考えも少しづつ変わってはいくのでしょうが、
それはそれとして。
焙煎って結局なんなんだい
コーヒーの生豆には12〜14%の水分が含まれています。
この水分を加熱することで蒸発させつつ、同時にコーヒー生豆の油脂分や糖分を
化学変化させることで、独特の風味を作り出すこと、それが焙煎だと考えています。
料理やお菓子作りでいう「焼く」とか「揚げる」とかいう調理と考え方は同じです。
生焼けにしないとか、焦がさないとか、気をつけないといけないことも同じですね。
コーヒーの焙煎を始めると、まずちゃんと覚えたほうがいいのがまずここのところだと
思います。生焼けにしないこと、焦がさないこと。これができていれば、まずまず
飲めるコーヒーは誰にでも焙煎できるはずです。
それではコーヒーの焙煎について、進行に応じてステージ分けをしながら話を
していこうと思います。
「蒸らし」?「水分抜き」?
コーヒーを焙煎する時に、気をつけないといけないのが、生焼けにしない、ということ。
生焼けとは、要はコーヒー焙煎豆の中心まで加熱が行き届いていないということです。
風味が不十分で、特にアシディティは辛味を感じるような味になってしまいます。
コーヒー生豆を加熱していく際には、まずは火は弱めにしておいて、じわじわと
生豆を温めつつ、水分を適度に飛ばしていく作業が必要で、これがうまくいって
いないと上述のような生焼けになってしまうことが多いです。
この作業を、用語としては「蒸らし」とか「水分抜き」といいいます。
私は後者の「水分抜き」という言葉を使うことが多いですね。
焙煎の途中で生豆の状態をテストスプーンで確認し、匂いを嗅ぎ、「抜けた」
といえる状態を覚えることが必要といえます。見た目は白〜茶色っぽく、香りは
生臭い香りが無くなり、乾いた香りになったあたりですね。
その状態はコーヒーによっても違いますし、焙煎機によっても違います。
時間や、温度も色々な要因で簡単に変わるので、あくまで目安でとらえて
おくのが心を平穏に保つ秘訣です(笑)。だいたい6〜8分くらいで完了する
ようにしておくのが、今の私の考え方では好みの風味に仕上がりやすいと
感じています。
ロースティング
水分を適度に飛ばし終えたら、いよいよコーヒー豆の風味を引っ張りだす
「ロースティング」です。水分抜きはこれをするための準備、ということに
なりますね。
水分抜きが終わったら、コーヒーを強火で加熱していきます。
火力の強さは、コーヒー生豆の投入量、焙煎機の大きさ、能力で最適な
強さがそれぞれあるので、試しながら見つけていくことになります。
ここで火力が足りないと、水っぽい感じの風味になってしまいますし、
火力が強すぎると、塩辛い風味や、焦げた味の原因になってしまうので、
気をつけましょう。
強火にしてしばらくすると、コーヒー豆の「ハゼ(爆ぜ)」が始まります。
これは、コーヒー生豆を加熱していくことで生成された二酸化炭素を中心と
した揮発性の成分が、生豆の組織を広げていく時の音、といわれています。
ハゼの音が聞こえてきたら、ロースティングは終了です。
ここがうまくいっていれば、フレーバーのある、甘味を感じるコーヒーができます。
ハゼたらどうすんの
コーヒーは焙煎中に、2回ハゼを起こすことが出来ます。
1回目は上述のロースティングのとき。2回目は1ハゼが終わってしばらく
したときです。1ハゼは気体によってコーヒー生豆の組織が押し広げられる
音といわれていますが、2ハゼはさらに押し広げられることでコーヒー生豆の
組織が壊れていく音、といわれています。
個人的には2ハゼを深煎りの入り口、と捉えていますが、深煎り好きな方には
怒られそうですね(笑)。2ハゼに入ったあたりで、コーヒーには苦味が出てくる
ようになります。
で、今の私の考え方だと、コーヒーがハゼたら火力は少し落とすようにします。
これはハゼた後の焙煎の進行が水分を含んでいた頃と比べるとだいぶ速くなる
ということと、やはり焦げてしまう原因になるからです。
コーヒーがハゼたら適度な火力で様子を見つつ、好みのところで焙煎機から
豆を出し、焙煎は終了。だいたい流れとしてはこんな感じで考えています。
ハゼたあと急に火力を落とすパターンもありますが、それをするとなんとなく
味の厚みがなくなってしまうような印象があります。ですので焙煎中の最大火力
よりは落としつつ、焦げないように進めていける火加減を見つけることが必要
だといえますね。
このへんも豆によりけり、焙煎機によりけり、季節によりけりです。
焙煎のことは、豆に聞けってこと。
つらつらと焙煎の進行について書いてきましたが、「投入の温度は?」「1ハゼの温度は?」
「焙煎時間は?」といったことに全く触れていません。それは、焙煎する環境次第で、だいぶ
そのあたりの数字が変わってしまうからです。
Saltspring Coffee Roasting Facility / Kris Krug
あくまでもコーヒー生豆の様子を見ながら、今現在の焙煎のステージ、豆の状態を
見極めていくこと、それが実はいちばん重要な事だといえると思います。
ここで私が書いている焙煎のステージについても、もっと細かく分けている方もいらっしゃる
でしょうし、実際私も分けてはいますが豆の状態はそうハッキリ線引きできるようなものでは
ありません。シームレスに、持続的に、刻々と、生豆は変化していくのです。
そしてそれは、同じ生豆でも焙煎するたびに違うことだって普通にあるのです。
コーヒー生豆は工業製品ではありません。いくら均質だとはいっても、麻袋の中で
多少なりともムラがあるというもの。その時その時の正解は、いつだって焙煎されて
いる生豆に聞くしかないんじゃないかなぁ、と思うのです。
ですので、私はけっこう頻繁にテストスプーンで状態を確認しながら焙煎します。
焙煎機が表示する温度は、あくまで目安程度にとらえておいて、「何℃になったから
○○しなきゃ」ということは(今のところ)ありません。
基本的な焙煎の進め方がわかってきたら、あとは豆に聞きながら、そして出来上がった
コーヒーをカッピングしながら、自分の考える正解を探す作業になってきます。
結局のところ、トライ・アンド・エラーでしかない、ということになるんですよね。
リトリートでも、焙煎の仕方は誰も教えてくれなかった(笑)
実は10月15日〜18日までSCAJ主催のローストマスターズ・リトリートに参加してきた
のですが、焙煎機の使い方は教えてくれても焙煎の仕方は本当に誰一人として教えてくれ
ませんでした。もちろんそれを期待していたわけもないのですが(笑)。
リトリートにあったのは、ただただこれまで書いてきたようなトライ・アンド・エラー。
焙煎してはカッピングし、カッピングしてはまた焙煎し、という検証作業そのものでした。
そしてその際の議論が、私にとっては何よりも得るものが多かったです。
終わってからも色々と考えていますが、やはりあれほどの機会は他にないですね。
本当に素晴らしい機会だと心の底から思います。
さて、自分なりに焙煎のことをつらつら書いてきましたが、やっぱり続けていくとこの
考え方も変わっていくんでしょうね。そして続けていくことでしか、自分の「正解」を
追い求めていくことは出来ないんだと思います。
とにもかくにも楽しくトライ・アンド・エラーを繰り返していきたいな、と!