ダイレクト・トレードがコーヒー生産地にもたらすもの

投稿者: | 2012/11/25
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ドイツ・ベルリンのスペシャルティコーヒーロースター、COFFEE CIRCLEが、
じんわりくる動画を公開していたのでご紹介します。

Gourmet-Kaffee & Bio-Espresso fair gehandelt | COFFEE CIRCLE

Coffee Circle – Our vision of Direct Fair Trade from Coffee Circle on Vimeo.

ダイレクトトレード(直接取引)のメリット

コーヒーのダイレクトトレードでは、コーヒー生豆の価格を、生産者とのコミュニケーションを通じて、
品質と生産者コスト(コーヒー生産にかかる人件費、施肥にかかる費用、燃料費等の総称)
を買い付け価格に反映して決定することがほとんどです。

そうすることによって生産者は継続的に品質の高いコーヒーを作り続けることができ、
それを求める バイヤーとしても、毎年品質の高いコーヒーが手に入ることを考えれば、
双方にとって良好な関係を続けられるといってもいいのではないでしょうか。

同じような取引にフェアトレードもありますが、フェアトレードでは変動する肥料の価格や
人件費、生産国の経済状況を考慮に入れてリアルタイムに買い付け価格を変更できる
わけではないので、フェアトレードだからといって必ずしも生産者が満足しているとは
限らない、という部分もあります。

コーヒーの取引を100%ダイレクトトレードにする、ということは不可能ですが、
この動画のようにダイレクトトレード による恩恵を受けられる生産者が増えることには、
個人的には大いに賛成したいところです。

 

ダイレクトトレードの難しさ

とはいうものの、コーヒーの買い付けは簡単なものではありません。
上記のように価格を決定したとして、「その価格でそのロットを何トン買ってくれるのか」
ということは大きな問題になる所だと思います。キロあたりの価格は高くても、
トータルである程度の量を買ってくれなければ、コーヒー生産にかかる費用を回収することは困難です。
「有名なバイヤーが高く買ってくれるのはいいけど、よくできた小さなロットしか買ってくれない」
ということになると、果たしてそれで来年も高品質なコーヒーを作り続けることはできるでしょうか?
来年もそのバイヤーはコーヒーを買い付けてくれるのでしょうか?
同じように高い価格で買い付けてくれるバイヤーが見つかる保証はあるのでしょうか?

ただダイレクトトレードであるというだけでは、コーヒー生産者の生活を保証するものにはならないのです。

かといってバイヤーの側も、あれもこれも買い付けていては資金が足りるはずもありませんので、
単純に「あなたのところのコーヒーを全量この価格で買うよ」とは言えないのも当然のことなのです。
その問題を解決するために、欧米では他店舗展開し焙煎は一箇所の工場に集中させることで
コーヒーの販売量を伸ばすようにしたり、そもそもコーヒーの消費量がそれほど多くない日本などでは
いくつかの自家焙煎店がグループを作って共同でコーヒーの買い付けをすることで、
コーヒーの買い付け量を増やしたりして、品質の高いコーヒーをある程度大量に確保するために
策を講じています。
また、コーヒーの輸入商社も、そういう意味ではマイクロロースターの味方として機能しています。
1店舗ではコーヒーの買い付けができなくても、いくつもの焙煎店にコーヒー生豆を卸している
商社では、焙煎店の必要な量を取りまとめて、まとめて買い付けることができます。

コーヒービジネスで、いちばんリスクがあるのは誰でしょう?
それは、コーヒーの生産者以外にありえません。だから、私の身の回りにある
コーヒーのほとんどは、直接的にせよ間接的にせよ、生産者にしっかり利益が届き、
コーヒーの生産・消費が正しく回るコーヒーなのです。

 

コーヒーは色々あるけれど

前述したように、全てのコーヒーがフェア&ダイレクトトレードによって
取引されるようにはなるのはほとんど不可能でしょう。
ただ時には、誰がどこで作ったのかわかる、美味しいコーヒーに触れて、
コーヒー生産地のことに思いを馳せるのも、悪くないのではないのでしょうか。

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