WetMillのトピック“コーヒー生豆は冷凍すべきか?”

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WetMillのトピック“コーヒー生豆は冷凍すべきか?”琥珀色のウタカタWet Mill
WetMillで最近話題のトピックを紹介します。

このブログを昔から読んでいただいている方はご存知かと思いますが、
コーヒー生豆を冷凍して鮮度を保つ、という考え方を大きく打ち出した最初の人は、
テロワールコーヒーのジョージ・ハウエル氏ではないでしょうか。

Terroir Select Coffees – Freshly Roasted does not necessarily mean Fresh Coffee

08年のSCAJにおいて、氏のプレゼンテーションを聞き(その時は半分ほどダテーラ農園のプロモーションでしたが)、
ペンタパック(アルミ蒸着フィルムの真空パック)で包装の上冷凍保存した04年産のコーヒーと、そうでない
04年産のコーヒーを飲み比べる機会があったのですが、その差は明らかでした。
冷凍保存したコーヒーはほとんど完璧にフレッシュな風味を保っていて、
そうでない方は水分が抜けていったことによる枯れた香りと渋みがあり、その差に非常に驚いた記憶があります。

もちろんジョージ・ハウエル氏の最近の考えも後ほど紹介できるのですが、
まず、始まりはオリバー・ストランド氏のこのポスト。

Wet Mill : Deep Freeze

First, could you give us a quick history of when you started to freeze? And when you feel you figured it out?

Second, could you outline your protocol for freezing coffee? How do you decide which coffees to freeze; how do you prepare them; and how are they frozen?

Third, what have you found?

最初に、私たちにいつ冷凍を始めたかの簡単な経緯を教えてください。
また、いつ理解しましたか?

次に、コーヒーの冷凍のためのプロトコルを概説していただけませんか。
あなたは、どのコーヒーを冷凍するかをどのように決定するか;
あなたはどのようにそれらを準備するか;また、それらはどのように冷凍するのか。

第3に、何を発見しましたか?

実は、このエントリーの発端は、Twitterでの会話です。
コーヒーのフレーバーのピークとはどこにあるのか、というのが話題の中心だったように思います。
コーヒー生豆はそのままだと水分を放出していくことによって徐々に枯れたような香りになっていきます。
これをウッディ(Woody:木のような)やバギー(Baggy:麻袋のような)と呼び、基本的には好まれません。
生豆が時間経過や保存条件によって風味を劣化させていることのあらわれだからです。

またコーヒー焙煎豆も、焙煎直後から二酸化炭素とともに香気成分を放出していき、
2~4週間後には油のような少し乾いた香りに変化していきます。
これも、風味の劣化だと私は捉えています。二酸化炭素の放出割合によって
個々人の好みの風味特性があらわれる瞬間があって、それをもって“ピーク”ということができるでしょう。

さらにコーヒー抽出液も時間によって(抽出後の温度変化によって)風味を変化させていきます。
良いコーヒー(特に浅煎り~中煎り)は冷めるに従ってフルーツのような風味や酸味、甘味を感じさせ、
個人的にも少し冷めてきた位が、実はコーヒーが美味しい瞬間ではないか、と思うことが多々あります。

それに答えたのがジョージ・ハウエル氏。以下に氏のエントリーを引用します。

Wet Mill : Freezing Green Coffee Basics

All coffees arriving in vacuum sealed bags (20 lbs per bag maximum, ideally, often three per box) are cupped and every bag is inspected for leaks. These are resealed. Assuming the quality is what we expected, the boxes are then immediately shipped to a frozen food commercial warehouse, located a few miles away. The coffees are kept at 0 F (-18 C). All other coffees arriving in GrainPro or jute (rare these days!) are immediately cupped and, assuming they pass, are repackaged in our warehouse and sent to the same freezer.

バキュームパックで届いたコーヒー(1バッグあたり20ポンド(約10kg)で、一箱あたり3バッグで箱詰め)はバッグごとにカップされ、漏れの有無を調査し、漏れがあればシールし直します。コーヒーの品質が期待した通りのものであれば、数マイル離れた冷凍倉庫に輸送されます。コーヒーは0℃に保たれます。グレインプロや麻袋(最近は本当に少なくなりましたが)のコーヒーはカップされ次第詰め直され(バキュームパックされ)、同じく冷凍倉庫に送られます。

とのことですが、全てのコーヒーを冷凍するわけではなく、“Terroir”ブランドにふさわしいものに限られるようです。
基準よりもカップの結果が良くなかったコーヒー(それでもとても品質は高いのですが)はグレインプロに包まれ、温度管理された倉庫に保管される、ということだそうです。

それに反論と意見を述べたのは、ティム・ウェンデルボウ氏。
彼はコーヒーを冷凍保存しないそうです。
まずはコストの問題と彼自身の経験による部分、ノルウェーの環境によるもの(倉庫の気温が年間で0℃~12℃!)
があるのですが、意見の核心部分を引用します。

Wet Mill : I stopped freezing

Freezing and vacuum sealing can be good, but for me it did not make sense as some coffees did not keep well regardless. I felt there was bigger improvements that could be done at origin in order to prevent coffee from fading too fast. I could write a long blog post on this alone. To sum up I have been working on improving drying techniques, improving storage and packaging while coffee is stored at origin. Taking control over shipping conditions is next step. So far this seems to me to be a lot more efficient in order to keep coffee fresh for a little longer than normal.

冷凍保存とバキュームパックは、確かにいいかもしれない。しかし不注意で良い状態が保たれないコーヒーは、私にとって意味を成さない。風味が速く失われていくのを防ぐためには、もっと大きな効果をもたらすものがあると感じている。それについては長いブログを書くこともできる。要約すると、コーヒーを乾燥させる技術や保存、包装を向上させることだ。次に、輸送の状態。これまでのところ、コーヒーを通常の物より長く品質を保つためには、もっと他に有効なことがあるようにみえる。

ティム・ウェンデルボウ氏のいうことも一理あって、いくら風味を長く保ちたいから冷凍するとはいっても、
もともとのコーヒー生豆のレベルで高品質なものでなければ何の意味もないわけです。
しかしノルウェーの環境はこう見てみると、コーヒーを保存するのに理想的すぎてちょっと羨ましくもありますねぇ…

それに返信する形のジョージ・ハウエル氏のポスト。
コストに関してはティム・ウェンデルボウ氏がいうほどにはかかっていない、と示した上で
タイトルですでに述べていることを説明してくれています。 (APEX:頂点の)

Wet Mill : Freezing is only for APEX quality coffees!

We make sure all our coffees are truly fine and the very best ones of the year we freeze. We want our customers to have access to the great coffees all year without those coffees degrading: this leads to a more informed customer.

私たちはその年の、本当に素晴らしい、いちばんのコーヒーだと確信できるものを冷凍するようにしています。私達の顧客に一年を通じて劣化することのない素晴らしいコーヒーに出会って欲しいのです。それが、より知識を持った顧客に繋がっていくのです。

ジョージ・ハウエル氏の哲学には個人的に非常に感銘を受けているところがかなりあるのですが、この氏のエントリーには引用部分以外にも非常に大事なことがいくつも書かれていました。

そして、ティム・ウェンデルボウ氏の返信。
これは別の話になるけど、と断っていますが、これは彼の考えで一貫している部分なので引用します。

Wet Mill : Freezing

There are for sure some great farmers around the world doing a spectacular job producing very high quality, but I also know for a fact that a lot of these farmers needs to improve how coffee is dried and stored, etc. I have several times received coffee that is woody coming straight from the container, even from some of the best farmers, and in my opinion the potential to improve quality at farm level is much greater and makes a lot more sense than to stick those problems in the freezer. I think the more value a farmer is able to add to their product the better and more sustainable it will be for their businesses in the long run.

世界中に素晴らしい生産者がおり、目覚ましい仕事でとても高品質なコーヒーを作っていることはたしかだ。しかしそんな生産者たちもコーヒーをどう乾燥させどう保管するか、等ということをもっと向上させる必要があるということも私は知っている。コンテナからまっすぐ漂ってくる枯れたような香りのコーヒーを、そんな素晴らしい生産者のコーヒーでも、受け取ったことがあるし、私の意見では農園のレベルで品質を向上させられる可能性は、コーヒー生豆を冷凍してコーヒーの品質を保つことよりも、大きく意味があることだと思う。生産者がより品質を向上させ、よりサステイナブルに、長期にビジネスを続けてくれることが、より価値のあることだと思う。

この二人の方向性の違い、というか根底ではほとんど考えなのでしょうけれど、というのは面白いなぁと読んでいて感じました。
ジョージ・ハウエル氏は非常に高い視点からコーヒーを捉えているように見えますし、ティム・ウェンデルボウ氏はどちらかというと
目線を同業者やコーヒー生産の現場に置いているような気がします。彼の意見は自身の経験からくるものに裏付けられているようですしね。

しかしながら今のところ、コーヒー生豆を冷凍することによって本当に品質が保たれているのか、収穫直後と比べてどうなのか、ということについては、実はまだ科学的な根拠があるわけではありません。ジョージ・ハウエル氏が度々口にしている“water activity:水分活性”についても、コーヒーについてはまだはっきりとしたことが明らかになっているわけではないようです。

コーヒーについて、知れば知るほど実はまだまだ知らないことがたくさんあるんだなぁ、ということを思わされます。
よりよいコーヒー、より品質が高いコーヒー、それがコーヒーの全てではないですし、全てがそうなることは不可能ですが、
そういったコーヒーに相応の対価がもたらされることによってそんなコーヒーに継続的に出会えることを、個人的にも望んでいます。

Thank you for very interesting discussion,Wet Mill!

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