“コモディティコーヒー”と“スペシャルティコーヒー”

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“コモディティコーヒー”と“スペシャルティコーヒー”琥珀色のウタカタこのあたりでちゃんとしておかなければな、と思ったので、ちょっと固いかもしれないですが、「スペシャルティコーヒー」と「コモディティコーヒー」の話をしたいと思います。

下の画像は、よくフェアトレード関係の話題で使われている図。この図が示しているのは、コーヒー一杯の価格に占める、コーヒー生豆価格の割合です。コーヒー農家の収入になるのはわずか3円~9円とされており、これは安すぎる!等々言われるわけですが個人的にはそれくらいが妥当なところだとも思います。このあたりはカフェや喫茶店の諸経費を考えれば致し方のないことで、かつ本エントリーの主旨ではないので触れません。

今回お話するのは、この価格の決め方が、スペシャルティコーヒーとコモディティコーヒーでは違う、ということです。

※コモディティコーヒーは、「コマーシャルコーヒー」とも呼ばれることがあります。この呼称について個人的にはまったく謎なのですが、とりあえず本エントリーでは「コモディティ」の記述で統一したいと思います。

 

◆コモディティコーヒー

定義としては、「商品先物取引」で売り買いされているコーヒーのことです。
おもいっきり細かいところを端折って説明すると、国ごとの規格でコーヒーを格付けし、そのランクごとのコーヒーを全部まとめて需要と供給によって価格を決める、いわゆる市場取引によって売買されている、ということになります。

どんな銘柄が取引されるかというと、日本でコーヒーの先物取引を扱う東京穀物商品取引所によると、こんな感じのようです。

【東京穀物商品取引所】取引案内:格付表(アラビカコーヒー生豆)

これらのコーヒーはどのように格付けされているかというと、国によっても様々なのですが大雑把にいって育成されている標高、スクリーンサイズ(コーヒー生豆の粒の大きさ)、欠点豆の多寡といったところです。これらのコーヒーは、どこの誰が作ったか、ということは一切関係なく、混ぜられて選別されています。味については基本的に、欠点があるかどうかのチェックを中心になされています。

この仕組み自体は、まったく批判されるべきものではありません。キロあたりの価格でコーヒーを買い取る仕組みが存在しなければ、コーヒー農家が存続することはほとんど不可能です。なぜならコーヒーは農産物であり、高品質なものから低品質なものまで生産されうるからです。

むしろ問題は、高品質なものまで一緒にキロあたり価格で買い取られていってしまうことです。苦労して生産した品質の高いコーヒーには、もっと高い価格を払ってもいいはずなのです。

 

◆スペシャルティコーヒー

いいものから悪いものまで全て混ぜられてしまっていたコモディティコーヒーから、素晴らしい風味をもつ高品質なものを選別してくれれば、市場価格よりも高い価格でコーヒーを買い取るよ、というところから、スペシャルティコーヒーは始まっています。もちろんそれを標榜するだけでは、生産者たちが高品質なコーヒーを作り続けるモチベーションにはならないので、様々な仕組みを構築してきています。例えば高品質なコーヒーを評価する基準の設定です。有名なのはSCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)の作ったフォーム、COE(カップオブエクセレンス)の品評会で使われるフォームでしょう。とりわけCOEの存在は、スペシャルティコーヒーの話をする上で欠くことの出来ない要素といえます。

それからコーヒー生産国で高品質なコーヒー生産を支える団体の設立、具体的にはグァテマラのアナカフェやコスタリカのエクスクルーシブコーヒー、コロンビアのFNC、ブラジルのBSCA等です。他にも挙げきれないほど各方面からの活動や業界全体のムーブメントのようなものがあって、今の多様なスペシャルティコーヒーの存在があります。

最後に大事なことは、コモディティコーヒーとスペシャルティコーヒーは対立する概念ではない、ということです。この2者の違いは、流通経路(価格決定のプロセス)と品質です。コーヒーによって生計を立てている生産者が、手間をかけて高品質なコーヒーを作れば、もしかしたらもっと収入が得られるかもしれない、自分のコーヒーを高く評価してくれる人がいるかもしれない、そんな仕組みがある、ということに過ぎません。

 

◆スペシャルティコーヒーのいいところ

これは以前も記事にしたことがありますが、

「スペシャルティコーヒー」にしたほうがいい2つの理由 | 琥珀色のウタカタ

スペシャルティコーヒーの価値は、作っている人にお金が回るような仕組みになっていること、これに尽きると思っています。スペシャルティコーヒーの価格は、コーヒーの品質とそれにかかる様々なコストを考慮して決められています。だから、全体的にはコモディティコーヒーよりも高い値段で取引されることがほとんどです。

そしてさらに付け加えるとすれば、継続的に高品質なコーヒーを生産者が作り続けられる環境を作っていける、そしてより精神的・経済的に豊かな暮らしが送れるようになる可能性があること、これもスペシャルティコーヒーがもたらしている価値だと思っています。いちスペシャルティコーヒーの消費者として、私は可能な限りそういったルートで仕入れられたコーヒーを扱っているロースターさんからしか買わないようにしています。

 

◆コーヒーの価格を決めるもの

コモディティコーヒーは需要と供給、スペシャルティコーヒーは品質、と説明しましたが、実はそれだけがコーヒーの価格を決めているわけではありません。生産国の経済状況や原油価格、政治動静、もっと大きく見れば地球規模の気候変動などによって、投機対象であるコーヒー、特にコモディティコーヒーは、価格を変動させます。

(via from Futures.Quote.com | Coffee Futures Chart)

画像は、過去2年間のコーヒーの価格をグラフにしたものです。象徴的なのは昨年上半期の高騰で、これは投機が集中したことが原因ですが、またいつ・どんな影響でコーヒーの価格が変動するか、まったくわかったものではありません。市場価格の高騰によって、コーヒー農家が、これまでコーヒーを買っていてくれたバイヤーではなく、コモディティ市場に売り渡す国内の仲買人に売ってしまった、という出来事もあったと聞いたことがあります。私はその時、こういった価格変動で一番怖いのは、スペシャルティコーヒーの価格が連動して上がってしまうことではなく、生産者がスペシャルティコーヒーの生産をやめてしまうことなんだ、と実感しました。そういうときに頼れるのは人としてのつながりの部分なんだ、ということも感じましたし、コーヒーが少々高くても、また来年このコーヒー飲めるならいいや、とも思いました。

相次ぐコーヒー価格改定に思うこと。 | 琥珀色のウタカタ

 

◆まとめ

思うに私たちは、コーヒーに限らず様々なものの値段にもう少し思いを至らせるべきなのかもしれない、と思います。たまたま私はコーヒーを通じてそういうことを考えるきっかけを得ましたが、世の中にはどういった理屈で価格が決まっているのか、実はよくわかっていないものが沢山あるような気がします。個人的には少なくとも、自分が好きなものについては、できるだけ品質に誠実な価格設定になっているものを選びたいと思います。そういう考え方が、もしかしたら遠回りかもしれないですけど、自分の好きなものを支える一番簡単な方法なんだと思います。

美味しいコーヒーがなくなってしまうのは、やっぱり嫌ですからね。

We should get to know for what money is paid about coffee.

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