コーヒーの品質を向上させる、産地での3つの取り組み

[`evernote` not found]
LINEで送る
Pocket

コーヒーの品質を向上させる、産地での3つの取り組み琥珀色のウタカタコーヒー生豆の品質は、どういった生産の過程をとっているかでほとんど決定されます。
それを向上させていくにはひとつの目標に向かって農園が一丸となって取り組んでいく姿勢が
必要で、スペシャルティコーヒーの世界ではいわゆるダイレクトトレードを行っているバイヤーが、
それを引っ張る役目を担っている側面があります。

このブログで何度か取り上げているのでご存じの方も多いと思うのですが、 ティム・ウェンデルボウは
ノルウェーのワールドバリスタチャンピオンで、 現在は同名のスペシャルティコーヒーロースターを経営し、
産地へも足を運ぶ スペシャルティコーヒーバイヤーでもあります。

彼がどのような産地での取り組みをしているのか、非常にわかりやすい動画があったのでご紹介。

Improving quality in 4 days at Finca Tamana from Tim Wendelboe on Vimeo.

動画はコロンビア、ウィラにあるFinca Tamanaという農園で、実際に彼が助言したことで
コーヒーがどう変わったか、というのが大変よくわかると思います。
コーヒーの生産において重要なポイントが、この動画からは3つ読み取れます。順に解説します。

1.セレクティブ・ピッキング

(via from Tim Wendelboe ≫ Finca Tamana part 2. Improving Cherry selection. )
コーヒーを収穫の際に摘み取ることを「ピック」「ピッキング」といい、ピッキングする人達のことを「ピッカー」と呼びます。
ティムはこの農園において、ピッカーたちに指示をしています。

“The first thing we will be focusing on is the cherry picking.
We will only accept fully ripe cherries to be picked.
The green and semi ripe cherries is not to be picked as they need to be left on the trees to ripen.
If you pick the green and semi ripe cherries, the quality of the coffee and therefore the value of the coffee will be lower,
Elias will loose money, and therefore not be able to pay you better.”

“私たちが最初に注目するのはチェリー・ピッキングです。
私たちは、完全に熟したチェリーしか受け取りません。
熟すまで木にそれらを残す必要があるとともに、未熟および完熟していないチェリーは取ることができません。
あなたが未熟なチェリーや未完熟なチェリーを取ってしまうと、コーヒーの質およびコーヒーの価格が
低くなってしまい、Elias(農園主)は対価を得られず、したがって、あなたたちによりよく賃金を払うことができないでしょう。”
(via from Tim Wendelboe €New project at Finca Tamana in Colombia)

そしていい仕事をしたピッカーには割増の賃金を支払うという取り決めを交わし、
今回のケースはピッキングされたチェリーの品質が大きく向上したようです。

(via from€Tim Wendelboe €≫ Finca Tamana, part 3. Meeting with the pickers. )

完熟したチェリーを用いることで、完成するコーヒーの品質は総じて高くなります。
未熟なものが多く混じっていると、コーヒーの渋みや、甘味が欠如する原因になります。

 

2.クレンリネス

(via from Tim Wendelboe ≫ Finca Tamana, Part 4. Improving Processing )
コーヒーの生産処理を行う機械に、「パルパー」と呼ばれる、コーヒーチェリーから果肉を剥がすものがあります。
動画の中で示されるように、掃除を怠るとパルパーにはどんどんコーヒーの果肉が溜まっていき、腐敗し、
コーヒーのクリーンカップを阻害したり、不適切な発酵臭が発生したりする原因になります。

我々がコーヒーを抽出する器具も同様ですが、コーヒーの生産においても、清潔な道具は必要な条件なのです。

 

3.アフリカンベッド(サスペンデッドパティオ)

(via from€Tim Wendelboe ≫ Finca Tamana, Part 5. Drying coffee. )
コーヒーを乾燥させる、広いコンクリートやレンガでできた広場を「パティオ」といいます。
中南米では上述したように地面を利用してパティオを作り、そこでコーヒーを乾燥させるのが
一般的なのですが、ここ数年でアフリカンベッドと呼ばれる網棚でコーヒーを乾燥させる方法が
普及してきています。コーヒーの乾燥工程はコーヒーの品質において非常に重要で、
適切な温度かつ早すぎず遅すぎない速度で、しかも均一に乾燥させないと、コーヒーの風味や生豆の
劣化する速さに影響することがわかってきています。

アフリカンベッドは上下から風が通るようになっており、地面のパティオより乾燥する速度が早いです。
気候によっては動画のように覆いをかぶせ、乾燥の速度をコントロールしてやる必要があります。

もともと地面にパティオが建設できない丘陵地帯や、コストの関係でパティオの建設を断念していたような
生産者も、アフリカンベッドだとコストを抑えて乾燥場を作れるそうで、しかも品質も向上させやすいため、
アフリカン、とは言いますが、こうして中南米でも導入する生産者が増えてきているようです。

 

■まとめ
これらの取り組みは、最近のスペシャルティコーヒー生産において、徐々に当然のこととして
浸透してきている感があります。早い時期からこうしたことに取り組んでいた生産者たちの
中からはカップ・オブ・エクセレンスに入賞するようなところも出ていますし、上記3つの項目は
かなり正解に近い品質向上の施策なのだと思われます。

他にもパーチメント(コーヒーの果肉を剥がしたあとの、殻に包まれたコーヒーの呼称)から
ムシラージ(ミュシレージとも:パーチメントに付着した糖質ベースの粘液質)を取り除くために
水に漬ける発酵工程や、それを洗い流す工程においても、ティムの持っている知識を導入し、ケニアで
行われている方法に近い発酵工程を取っているのですが、これは地域によって向き不向きもあるので、
今回は除外しています。しかしコーヒーの生産においてこの発酵工程は行うにしても行わないにしても、
品質に大きく関わる部分なので、上記3項目に加えて4つめの重要なポイントといえるかもしれません。

そしてもちろん、各工程で発見される欠点豆(浮いたパーチメントや汚れたパーチメント)の除去も、
欠かすことはできません。生産の過程の、要所要所で欠点豆を取り除いていき、結果残ったものが、
私達が口にする「スペシャルティコーヒー」たりえるのです。さらに生産処理の終わったパーチメントを
どのように保管しておくのか、ということや、脱穀後の生豆をどのようにパッキングし輸送するのか、
といったことも忘れてはいけません。コーヒーの生産現場に比べるとクオリティに占める比率は
大きくないこれらの項目も、生産処理段階で得られた高い品質を保つには、やはり必須といえるでしょう。

ついつい長くなってしまいましたが、コーヒーの生産には「これさえやっておけば!」という
特効薬的なものは実は存在しないのだと思います。品種、施肥、収穫、生産処理のすべてが、
ある程度のガイドラインはあるにしろ、結局のところトライアンドエラーの中からしか、確かなものは生まれてきません。

こうした取り組みを一緒になってできる関係性の構築、というのがそもそも、最初に大事なことなのもしれません。
スペシャルティコーヒーはこうしてたくさんの人の手によって支えられている産業なのですね。

色々なことを考えさせてくれた、ティム・ウェンデルボウのブログに感謝!
I hope Finca Tamana to improve their coffee quality.

Comments are closed.